秀吉文書の花押と朱印、何が違う?名前の文字だけで探さない読み方

※本記事には広告・アフィリエイトリンクが含まれます。

秀吉の手紙の解説を読むと、名前の後ろに「花押」。別の文書には「朱印」。どちらも印鑑のことかな、と迷いますよね。

違いは、花押(かおう)が筆で書くサイン、朱印(しゅいん)が朱肉を使って押す印だということです。秀吉が出した手紙や命令書などの「文書(もんじょ)」には、名前の文字と一緒に示されるものだけでなく、花押のみ、朱印のみとなるものもあります。

だから、「秀吉」の二文字がすぐ見つからなくても、そこで見るのをやめなくて大丈夫。まずは解説がどこを指しているか、一つずつ合わせてみましょう。

目次

花押は、普通の文字のように読めなくても大丈夫

名古屋市博物館の「秀吉文書を読む」は、花押を筆書きのサイン、朱印を朱肉で押した判と説明しています。まずは「書く」と「押す」の違いを押さえると、二つを分けられます。

花押の形を見て、これが何という字なのか分からない。それでも、本文を読む入口としては困りません。解説に花押とあれば、まずその位置を探すところからでよいんです。

たとえば京都国立博物館が紹介する、六月二十四日付の小早川左衛門尉宛文書。同館が活字にした本文では、末尾に「秀吉(花押)」と示されています。

この「(花押)」は、サインがあることを知らせる表記として読みます。秀吉の名に続いて、普通の活字へ置き換える名前とは別の部分もある、と分かりますね。

崩して書かれた「くずし字」を全部読めるようになるまで、何も見られないわけではありません。日付、宛先、名前、花押。分かる箇所を足場に、本文へ進めます。

朱印状は、朱印のある文書。命令書だけとは限らない

国立公文書館の解説では、花押のある文書を「判物(はんもつ)」、朱印を押したものを「朱印状」と説明しています。

ここで気を付けたいのは、形式の名前と、伝えている内容は別だということです。朱印状という題名だけで、土地を与える命令だと決める必要はありません。

名古屋市博物館の天王坊宛の朱印状紹介では、出陣した秀吉へ見舞いとして贈られた、帷子(かたびら)という衣服への礼状が取り上げられています。朱印のある文書でも、お礼を伝える内容なんですね。

作品名を見たら、次に「誰から誰へ、何を伝えるもの?」と解説へ戻ってみてください。形式と用件を分けると、朱印という名前だけで想像していた文書が、一通の具体的なやり取りとして見えてきます。

名前が省かれることもある。形だけで年代を決めないで

名古屋市博物館の解説は、秀吉が天皇を補佐する職である関白になった天正十三年(1585)ごろから、花押のみ、朱印のみの文書になると紹介しています。同じ人の文書でも、ずっと同じように姓名が書かれているとは限らないんです。

ただ、それは「赤い印さえあれば秀吉」「花押があれば何年」と、一点だけで判定できるという意味ではありません。所蔵先の解説が示す文書名や年代、相手、本文も合わせて読みましょう。

一つ自分で確認するなら、花押か朱印かを見分けた後、その文書で名前がどう表されているかを確かめてみてください。最初はそこだけでも、二通を比べる場所ができます。

くずし字の本文にも進みたいなら、渡邊大門編『戦国古文書入門』が関連します。出版社提供の書誌・目次では、戦国大名の書状を用いた解読入門で、豊臣秀吉を扱う項目も確認できます。今回紹介した二通がそのまま載っていると確認した本ではなく、実際の文字を読む学習へ進むための候補です。

秀吉の文書も扱う『戦国古文書入門』を楽天で見る

読み始めは、意味の分からない線や赤い印に見えていても大丈夫。「ここは名前、ここは花押」「こちらは朱印」と見る場所が一つ増えれば、古文書の前で立ち止まる時間も、ちゃんと読む時間になっていきますね。

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

史料や公的な案内を確認し、戦国時代の人物と史跡をわかりやすく紹介する編集部です。

目次